よ」
「なんだ、この少年と似ているのか。ふーん、じゃ、あの化け物もかわいい少年なんだね」
「そうです。似ているというよりも、双生児《ふたご》のように、いやそれよりも写真のようにといった方がいいでしょうが、この正太君そっくりなんです」
「なんだ双生児《ふたご》なのか」
「いや、双生児のようによく似ているというはなしです。それがたいへんおかしい。だから私は、こう考えているのです。あの怪少年は、人造人間にちがいない」
「えっ、人造人間? はははは、君はますますへんなことをいうね」
「いやじつは、さっき正太君から聞いた話で思いあたったのですが、あの怪少年こそ、ウラジオの人造人間研究家のイワノフ博士がこしらえた人造人間エフ氏じゃないかと思うのです。これはこれからのち、よくしらべてみないとわかりませんけれど」
「人造人間エフ氏!」
「いよいよこれはなんだかわからなくなった」
 そういっているとき、さっきから二人の傍《そば》に立って爆発現場《ばくはつげんじょう》を見まわしていた正太少年は、いきなり大きなこえをはりあげ、
「あっ、あそこに大木老人がいる。僕ちょっといって、大木老人にあってきます」
 それをきいた帆村は、正太の指さしている方を見た。なるほど髭《ひげ》だらけの眼鏡をかけた老人が、なんの用事があってか、壊《こわ》れた火薬庫のあとをうろついている。
「ちょっとお待ち、正太君。あの老人にあうのは、ちょっと待って下さい」
「なぜ大木老人にあってはいけないのですか。あの老人は、僕にもマリ子にもたいへん親切だったんですよ、さっき、僕が帆村さんにくわしくお話したでしょう」
「それはわかっています。それだから、ちょっと待ってくださいと、とめたんです」といって帆村は正太の顔をじっと見て、
「ねえ正太君。私はあの老人を一番あやしいと睨《にら》んでいたのですよ。なんだってあの老人は、怪少年があらわれると、いつでもかならずそのあとに姿をあらわすのでしょうか」
「僕、大木老人はいい人だと思うがなあ。船の中でも、僕のことをたいへんかばってくれましたよ。あのとき僕は、もうすこしで船の中の牢屋《ろうや》にいれられるところだったんです。そのとき大木老人がきてくれて、僕が無罪だということをさかんにいってくれたんです。だから僕は、牢にも入らないで、船の中をずっと自由に歩きまわることができたくらいなんですよ」
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