機械人形とはいわず、人造人間《ロボット》とよぶようになったほど、りっぱなものができるようになった。
だが、ちかごろ博士は、もう前のように人造人間《ロボット》を町の人々に見せたがらなくなった。ただ申しわけのように、年に一度、それは白い李《すもも》の花の咲きほころぶ春、お寺の門をひらいて、町の人々を庭園に自由に出入させ、そして機械でうごく人形や馬や犬などを庭園に出して、見物させるのであった。きょうはその年にたった一度の、人造人間《ロボット》デーであった。庭園の中には、町の人々がいっぱい押しかけ、めずらしいものを見ようとおしあっている。ことに入口の混雑ときたら、たいへんであった。
「おお、あなたがた、はいれましぇん。人造人間《ロボット》、たいへん秘密あります。日本人いれることなりましぇん。さあ、おかえりなさい、はやくおかえりなさい」
今しも、二人づれの兄妹《きょうだい》らしい日本人の少年少女が、入口の受付で、仁王《におう》さまのように大きいロシア人から、どなりつけられている。
「だって、僕たちは……」
「いけましぇん、いけましぇん。なにいっても、はいれましぇん」
受付の大男は、なかなかやかましいことをいって、兄妹を入らせまいとする。
イワノフ博士《はくし》
「じゃあ、イワノフ博士をここへよんでください。僕たちは、お隣りにすんでいる正太《しょうた》とマリ子という兄妹なんです。博士が……」
「なにいっても、日本人はいれましぇん。かえらなければ、私、つよいところを見せます」
「まあ、待ってください。だって博士が、僕たちにぜひ見に来いといって、さっき電話をかけてくださったんです」
「兄ちゃん、もうよしてかえりましょうよ」
小学校の四年生の妹のマリ子はあまり受付がひどい剣幕《けんまく》なので、もうかえりたくなった。
「お待ちよ、マリちゃん。だって博士が見に来いといったのに、受付の人からおいかえされるなんて、そんな変なことはないよ」
「こらっ、どうしてもかえりましぇんか。日本人|剛情《ごうじょう》でしゅ、私、腕をふりあげます」
「あれぇ、兄ちゃん」
マリ子は兄の正太をひきもどそうとする。正太は中学三年生、なかなかしっかりしている。その時だった。
その仁王《におう》さまのような受付の腹の中で、なにかギリギリギリと変な音がした。とたんに受付のふりあげた腕が、その
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