その結果、なんと皮肉なことにも、柿丘氏の結核空洞は、白石博士夫人の子宮腔《しきゅうこう》の大きさと、ほぼ等しい大きさをなして居ることを発見したのです。
 一石にして二鳥、なんにも知らぬ柿丘氏の手を借りて、その人を自滅させると同時に、その美しい呉子夫人を己《おの》が手に収めようとした貴方だったのです。敏感《びんかん》なる夫人は、健気《けなげ》にも、みずから進んで貴方の懐中《ふところ》に飛びこみ、或る程度の確信を得られると、早速《さっそく》私に真相を探求してもらいたいという御依頼があったのです。
 さて、貴方の買収された保険外交員と保険医とは、私と一緒について、この垣の向うに控《ひか》えて居ります。もし久濶《きゅうかつ》を叙《じょ》したいお思召《ぼしめ》しがあるなら、早速《さっそく》御《お》ひき合《あ》わせしようと思いますが、如何でしょうか。
 その間に私は家宅捜査をさせて頂いて、振動魔《しんどうま》の貴方が、計算せられた紙ぎれや、また柿丘氏には不合格になったと思わせた生命保険に、貴方が莫大《ばくだい》な保険金を契約して、柿丘氏を殺したあとで巨額の死亡支払金を詐取《さしゅ》したその証拠書類
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