たことなんです。右策は、それを学者ですからよく知っているのです。だから、あたしが今、妊娠したとしたら、その場であたしの素行《そこう》を悟《さと》ってしまいます」
「だが、僕の子だかどうか判らないとも云える……」
「莫迦《ばか》なことをおっしゃいますな。生れてきた胎児《たいじ》の血液型を検査すれば、それが誰の胤《たね》であるか位は、何の苦もなく判ってよ、それに貴方《あなた》は右策《うさく》とは切っても切れない患者と主治医《しゅじい》じゃありませんこと。あなたの血液型なんかその喀痰《かくたん》からして、もう夙《とっ》くの昔に判っていることでしょうよ」
「ああ、それでは貴女はこれからどうしようというのです。この僕をどんな目に遭《あ》わせようとするのです」
「あたしは、貴方との間にできた坊やを、大事に育てたいんです。あたしは、もうすっかり決心しているのよ。右策《うさく》がこのことに気付いたときは、出て行けというなら出て行くし刑務所へ送りこんでやろうというなら送りこまれもする。しかしいつか、あたしは自由の身となって、坊やと二人で貴方があたしのところへ帰ってくるのを待つんです」
「ウン判った。さて
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