したので……それに……」
「ああ、もうよろしい」
 金博士は、サービス係の言葉を押し止《とど》め、
「何かこう、古くて役に立たない飛行機があったら、一つ売って貰いたいものじゃが、どうじゃろう」
「古くて、役に立たない飛行機といいますと」
「つまり、翼《よく》が破れているとか、プロペラの端《はし》が欠《か》けているとか、座席の下に穴が明いとるとか、そういうボロ飛行機でよいのじゃ。兎《と》に角《かく》、見たところ飛行機の型をして居り、申訳でいいから、エンジンもついて居り、プロペラの恰好をしたものがついて居ればいいのだ」
「そういう飛行機をどうなさいますので……」
「なあに、わしが乗って、自分で飛ばすのじゃ」
「そんな飛行機が飛ぶ道理がありませんですよ」
「わしが乗れば、必ず飛ぶんだ。詳《くわ》しいことを説明している暇はないがね、兎に角、そういう飛行機を売ってくれるか売ってくれないか、一体どっちだい」
「売ってさし上げても差支《さしつか》えはないのでございますが、生憎《あいにく》そんなボロ飛行機は只今ストックになって居りませんので……」
「無いのかい。そ、それを早くいえばいいんだ。この忙《せ
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