買石《しょうかいせき》委員長であったのである。
「……金博士に見つかればたいへんです。私を窓から逃がして下さい」
 醤は泣き声になって、王大先生に囁《ささや》く。
「よろしい、わしの手を見て、早いところをやれ」
 と大先生はベッドの下と連絡をとって、やおら金博士の方へ向き、
「天井《てんじょう》のあそこにある彫刻な、あれは中々古いもので、純金《じゅんきん》だよ。よっく御覧!」
「へえ、あれがね」
 金博士を向く、王大先生はお尻のところで手を振る。とたんに硝子窓《ガラスまど》が大きな音をたてて跳《は》ねかえった。
「あ、あれは何の音?」
 金博士の顔が、さっと緊張した。
「あははは、今のは猫がとび出したのじゃ」
「あれで猫ですか。へえ、おどろきましたな。○○の猫は、ずいぶん大きくて人間ぐらいの大きさがあると見えますなあ」
 金博士は、大真面目《おおまじめ》でいった。
 窓からとびだした醤は、そのとき運悪く柊《ひいらぎ》の木の枝にひっかかり、顔も手足も血だらけにして歯をくいしばっていたが、金博士の声を耳にしてびっくり仰天《ぎょうてん》、狼狽《ろうばい》する途端《とたん》に、すとーんと地面へ
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