じゃちょっと説明しようかね」
 先を急ぐ筈の金博士は、そこで急にのんびり腰を据《す》えてしまって、
「いいかね。ここにABCDEなる五つの部分品があったとする。いずれも、重さは十キロずつとして、合計五十キロの重さのものだったとする」
「はい、その算術は分ります」
「ところが、そのABCDEの部分品を一処にして測《はか》ると、総重量がたった二十キロしかないんだ」
「そこがどうも分りませんなあ。一つ十キロのものが五個あれば、どんな場合でも総量は五十キロです」
「ところが、それが何とかの浅ましさというやつなんだ。いいかね。ABCDEの部分品をばらばらにして置いて一々測ると総計五十キロある。これはよろしい。その部分品を組合わせて測ると、これがなんと二十キロになる――という場合は、只一つある。それは、その部分品で組立てた器械が、重力打消器《じゅうりょくだしょうき》であった場合だ」
「え、重力打消器というと……」
「つまり、重さの源《みなもと》である重力を打消す器械のことを、重力打消器というのだ。つまり五十キロの部分品から成るその重力打消器は、組立てられることによって、三十キロの重力を打消す性能の
前へ 次へ
全26ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング