ないのです」
「えっ、人造皮膚というと」
「つまり人造肉と似たようなものです。人造なんですから、いつでもこれをばりばりと破って、新しいのと貼りかえられます」
「ははあ、そうでしたか」
 といったが、フルハタは唖然とした。さっきから、このチタ教授の素裸を見て、こっちが顔を赤らめていたわけだが、人造皮膚なら羞かしくないのはもっともだ。
「じゃ、失礼ながら、今のあなたの身体というものは、昔、母体から生れて大きくなったあなたの本当の身体とは、大部分違った別物なのですね」
「まあ、そういっても、大した間違いではありません」
「昔のままのあなたとしてのこっているのは脳髄と骨格と顔かたちとだけじゃないのですか」
「いや、そうではありません」
「じゃ、もっと残っているものがありますか」
「いや、その反対です。いまあなたのおっしゃった顔かたちも別物です。正直なことをいうと、わたしは生れつきあまり美人ではなかったのです。額はとびだし、眼はひっこみ、口は大きく、鼻は曲っていました。そこでわたしは、すっかり顔をとりかえて[#「とりかえて」は底本では「とりかええて」]もらいました。顔のカタログをみて、そのうちで
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