だったのである。フルハタは、羞恥でまっ赤になった。だが、この婦人は、顔を赤らめるどころか、いたって平気でフルハタの前に立った。
「フルハタ助教授。そうですね」
「そうです。フルハタです。扉をあけてくだすってありがとう」
「一千年前の世界に住んでいた一人類を、こうして発見したことはわたしのたいへん悦びとするところです。わたしは、あなたの記録を、百九十九区の防空劃を壊しているうちに発見したのですが、長い不錆鋼鉄管のなかに入っていました」
「ああ、そうでしたか」
といったが、かつて友人たちが彼の埋没記録をそんなふうにして二百本の厳重な筒におさめ、方々の地下に埋めたり、また博物館に陳列してくれたのをおぼえていた。
「で、あなたの名は、なんとおっしゃるのですか」
「わたしのことですか。わたしはハバロフスク大学の考古学主任教授のチタです」
「えっ、主任教授! 失礼ながらそんな若さで、主任教授とは、たいへんなものですね」
私は率直に愕きをのべると、チタ教授は笑って、
「ほほほほ。なにが若いことがありましょうか。今年で九百三回日の誕生をむかえるのですよ」
「えっ、するとあなたは九百三歳なのですね。
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