雪山で古神子爵を雪崩の中に突き落としたのではないか”を明らかにするためだったのです」
「まあ、なんという恐ろしいお話でしょう」
春部は自分の両肩をしっかり抱きしめて、身ぶるいした。
「だが、その結果は、そういう嫌疑は無用だということになったんです。婦人探偵たちの一致した答申《とうしん》でした。そこで私はこの旨を池上侯爵家へ報告しました。それでそのことは片附いたんです。しかしその四方木田鶴子さんの姿を今年になってから突然見掛けたのでびっくりしていました。キャバレのビッグ・フォアでしたよ、実はそのときは田川君が連れていってくれたんですがね」
「わたくしもそうなんです」
「え。何がそうなんです」
「田鶴子さんに初めて紹介されたのが、ビッグ・フォアだったんです。やっぱり田川が連れていってくれたんです」
「ああ、そうですか。するとこれはなかなか因縁が搦《から》み合っていますね」
帆村はポケットからパイプをとりだした。
「で、田川君の田鶴子に対する態度はどうだったんですか。あなたの目にはどううつりましたか、正直なところ……」
相手に辛いかと思う質問を、帆村は放ったのであるが、春部は無造作にそ
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