たい何者だろうか。
そうだ、あれかも知れない。あれというのは、地球が四回氷河期をむかえたが、その前にこの地上にすんでいた高等生物の子孫ではないかと思う。その当時、彼らのあるものは地上がさむくなったため、地中へにげこんだのだ。そしてそれ以来ずっと地中で何万年もくらしていた前世紀の生物じゃないかと思う。それがひょっくりこの穴の奥から出て来たのではあるまいか。ふしぎなことだが有り得ないことでもないと思う。
そういえば、兄さんがこれまでにこの穴で地中を伝わる震動をかんそくして来たが、どうもあたりまえの地震ではないところのへんな震動が交っていた。兄さんはその謎をとこうと思い、誰にもいわないでその研究をつづけて来たわけだが、それはついにこのような悲劇をむかえることとなった。なにごとも運命である。――だが、兄さんはまだ息があるうちに世界中でまだ誰も知らない地中怪人族を見ることができて、うれしいと思う。この怪物どもだよ、青髪山の魔神といわれていたのは。あの足あと、あのあやしい空中飛行……。
みなで警戒しなければならない。もっとりっぱな研究者たちをここへ送るようにせよ。十分に警備隊をおいて、けがのないようにせよ。相手はなかなかゆだんがならない怪物だよ――
あっ、また怪物どもがおしよせて来たようだ。兄さんはもう助からない。ピストルの弾丸のつづくかぎりうって――もう二発しかないが――あとは彼らにからだをまかすしかない。さよなら五助。みんなによろしく。
[#地から3字上げ]一造
「ああ、かわいそうに。君の兄さんは最後のピストルを二発うって、怪物につかまったんだよ。ぼくらがもっと早く来ればよかった」
「いや、ぼくらが早く来れば、ぼくらもまた怪物につれていかれたかもしれない。兄さんはぼくたちの生命をすくってくれたことになるんだ」
「なるほど、そうだったね。五助ちゃん、もっと奥を探してみようか」
「いや、よそう。兄さんは、危険だから早くふもとへひきあげろと書置《かきおき》してある。さあ早く穴を出ようや」
「そうかい、ざんねんだなあ」
二少年は、思い切って穴から外にはい出した。ところが、そのすぐあとで、どういうわけか、とつぜん地鳴りとともに大山つなみが起った。そして穴のあったところはすっかり岩石の下にうまってしまった。二少年は生命《いのち》からがら山をかけ下って、ふもとの村へかえりつい
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