かに月に飛行し、火星に飛行するための前提《ぜんてい》として、宇宙飛行の技術を完成することにあるのだと云ってよろしいと思う。別言すると、成層圏飛行は、やがて宇宙飛行にまで発展するであろう。そしてわれわれ人類は、既に宇宙飛行の技術習得に手を染《そ》めたのだとも云えると思う。そしてこれと並行して、新動力の研究が完成すると、われわれ人類は、どんどん宇宙飛行に出かけるであろう。そういう時代になったら、火星と地球との間を、一週間で往復することが出来るかもしれないし、それとともに、大宇宙に棲《す》む他の高等生物とめぐり合って、奇妙な交際が始まるかもしれない。そういう未来を考えると、われわれは、飛行技術といわず、あらゆる科学について、どんなに馬力《ばりき》をかけ金をかけて研究を急いでも、決して早すぎる、やりすぎる、ということはないのである。
次に話は、また現在に逆もどりするが、飛行機の無電操縦が既に可能なる今日、多数の爆弾を抱いて無人の成層圏機の大群《たいぐん》を無電操縦で敵国《てきこく》めがけて飛ばし、無人であるがゆえに、勇猛果敢《ゆうもうかかん》(?)なる自爆的《じばくてき》爆撃をやらせることも可能ではないかと思う。それが出来るなら、空襲警報も間に合わないほどの急襲《きゅうしゅう》をやることが出来、殊に雨夜の空襲をかけると、敵の防空隊の照空灯も届かず、聴音機も間に合わず、従って高射砲で狙い撃つ方法もなく、大いに戦果をあげることが出来ようと思う。が、これも例の素人考えである。
底本:「海野十三全集 別巻1 評論・ノンフィクション」三一書房
1991(平成3)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「航空朝日」
1941(昭和16)年6月号
入力:田中哲郎
校正:土屋隆
2005年6月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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