か」
「誰あてのでもいいですよ。――それから大事なことは、けっして女探偵だと悟《さと》られないように振舞《ふるま》ってください。ものを壊すにしても、良心にとがめるといったような菩提心《ぼだいしん》を出さないで、こんな壊れ物を扱わせるから壊れるんじゃないの……ぐらいの太々《ふてぶて》しさでやってください。なにしろすこしにぶい小間使らしく振舞ってください」と、帆村は自分の脳天《のうてん》に指をたてた。
「まあ、たいへん骨が折れますのねえ」
「まあ、そういわないで、やってください。主人公が何をいっても何をしても、例のすこしにぶい小間使の要領でいくんですよ」
「そんなことをして、どうしようというんですの。一体どんな事件なんですか。あたしにすこしぐらいお明《あ》かしになったっていいでしょう」
「ううん、それがいけない」と帆村は大きく頭をふり、
「そのように貴女が探偵気どりでいちゃいかんです。あとのことは僕がうまくやるから、貴女はなにも愕かないで筋書どおりやってください。どこまでも、うぶな娘さんのつもりでいてください」
「そして低脳ぶりを発揮《はっき》しろとおっしゃるんでしょう」そういって風間光枝
前へ
次へ
全36ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング