股の一部に灼《や》けつくような視線を送りながら、今この少女が起きあがって、どのような魅力のある羞恥《しゅうち》をあらわすことだろうかと、期待をいだいた。だが、一同の期待を裏切って、少女はなかなか起き上ろうとしなかった。ピクリとも動かなかった。
「様子がヘンじゃありませんか、皆さん!」
 そう云って立ち上ったのは、商人体《しょうにんてい》の四十近くの男だった。一座は俄《にわ》かにザワめいて、ドヤドヤと少女の周囲に馳けよった。
「早く起してやり給え」
 こう云ったのは、探偵小説家戸浪三四郎のうわずった声音《こわね》だった。
「モシモシ、娘さん」と甲斐甲斐《かいがい》しく進みでた商人体の男は、少女の肩を、つっついた。無論、少女はなんの応答《いらえ》もしなかった。さらばと云うので、彼氏は右手を少女の肩に、それから左手をしたから少女の胸に差入れて、グッと抱《かか》え起した。少女の頭はガクリと胸に垂れ下った。ヌルリと滑った少女の胸部《きょうぶ》だった。
「呀《あ》ッ」抱きおこした少女を前から覗《のぞ》いた男が、顔色をかえて、背後の人の胸倉《むなぐら》に縋《すが》りついた。
「血だ。血――血、血、血
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