そうとう》頼母《たのも》しい探索をしていてくれるから、彼と同盟すれば、大いに便宜《べんぎ》が得られるであろうという見込みだが、但し戸浪自身が犯人の場合は全く失敗になるわけだった。戸浪に会って気をひいた上で決定しようと考えた。赤星龍子が笹木の愛人であるのは驚いたが、前後二回も、殺人のあった電車にのっていたのは、一寸《ちょっと》偶然とは考えられない。実は先刻部下に命じて置いた龍子の動静《どうせい》報告がきた上で、もすこし詳《くわ》しく考えてみたい。……
大江山警部は電話のある室を出て、階段をプラットホームに下りながら、懐中時計を出してみた。もう夜も大分《だいぶ》更《ふ》けて、ちょうど十時半になっていた。昨日の今頃突如として起った射殺事件のことを思いだして、いやな気持になった。すると、どこやら遠くで、非常|警笛《けいてき》の鳴るのをきいた、と思った。
彼は階段の途中に立ちどまった。
「ポ、ポ、ポ、ポッ」
ああ、警笛《けいてき》だ。紛《まぎ》れもなく、上《のぼ》り電車の警笛だ。次第次第に、叫音《きょうおん》は膨《は》れるように大きくなってくるではないか。彼は墜落《ついらく》するように階段
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