。無論《むろん》戸浪が犯行につかったインチキ・ピストルも発見せられた。いいですね、帆村さん。
うまく龍子を射殺したと思ったのは戸浪の思いちがいだった。
龍子は目黒駅に居るとき死んでいたのだった。生きているような噂が拡がったのは、犯人をおびき寄せるため帆村探偵の案出《あんしゅつ》した手だった。戸浪は、探偵小説家の名を汚《けが》し、彼の変態的な純情(?)に殉《じゅん》じた、とでも結んで置きますか、ねえ帆村さん」
帆村は静かに笑った。「戸浪君は車内ではピストルをどこに隠してたか……」
「ああ、それを忘れちゃっちゃ、お手柄がなんにもならないな。エエと、戸浪はピストルの口を、上衣の右ポケットの底穴から覗《のぞ》かせて射ったため、僕の外には誰も気がつかなかった、というのはどうでしょう」
底本:「海野十三全集 第1巻 遺言状放送」三一書房
1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」博文館
1931(昭和6)年10月号
入力:tatsuki
校正:土屋隆
2004年11月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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