は、その後、杳《よう》として消息がわからなかったが、首領を失ったかれに何ができよう。その後、紀伊《きい》半島の沖合《おきあい》に、ヘリコプターの破片らしいものがうかんでいるのを見たものがあるというが、あるいはそれが、波立二の最後を物語っているのではあるまいか。
ヘクザ館から発見された宝石や古代金貨の噂《うわさ》は、たちまち全世界に喧伝《けんでん》された。それはいまの金に換算《かんさん》すると、零《れい》という字を、いくつつけてよいかわからぬほど、莫大《ばくだい》なものになろうという。
それらの財宝は、すべて、日本の教育復興のために使用されることになり、戸倉老人や少年探偵団、さてはまた、秋吉警部たちは、それから一銭の利益《りえき》も得《う》ることはなかった。
それにもかかわらず、いや、それだからこそ、戸倉老人も、少年探偵団の同志たちも幸福だった。
戸倉老人はその後、海岸通《かいがんどお》りの店を売りはらって、思いでの淡路島《あわじしま》を眼のまえに見る、明石《あかし》の丘に一軒の家を建てた。そして、いまでは草花を作りながら、静かに余生を送っている。その戸倉老人の何よりの楽しみは、土曜から日曜へかけて、泊りがけで遊びにくる、少年探偵団の同志たちに、御馳走《ごちそう》をすることであるという。
底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
1992(平成4)年2月29日第1版第1刷発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2002年1月12日公開
2006年7月29日修正
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