女……そんな、妙《みょう》なやつはどこにもいないぜ」
「そんなはずはありません。天窓から逃げだしたのは、横綱のような大男です。小男や猫女は、たしかにまだ万国堂のなかにいるはずです」
 春木少年の言葉に、警官たちや少年探偵団の同志が手分して、万国堂の隅から隅までさがしてみたが、小男も猫女も、どこにもすがたが見られなかった。
 ああ、いるべきはずの小男や猫女がすがたを消して、いるはずのない四馬剣尺が、忽然として万国堂の天窓から現われたというのは、いったい、どういうわけであろうか。……
 春木少年はそのことについて、深くかんがえこんでいたが、やがて思いだしたように、
「それはそうと、この家の主人、チャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]さんはどうしたのですか」と、警部にたずねた。
「ああ、チャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]か。あの男は可哀《かわい》そうに、ひどい目にあわされているよ。まあ、こっちへきてみたまえ」
 警部に案内されて、奥のひと間へ入ったとたん、春木少年は思わずあっと、ハンカチで顔をおさえた。部屋のなかの大火鉢《おおひばち》には、炭火《すみび》がかっかっとおこっていて、あたりいちめん、肉のこげるような匂《にお》いが充満《じゅうまん》しているのだ。
「見たまえ。チャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]の足を……あの足を炭火のうえにのせ、拷問《ごうもん》していたんだ。ひどいことをするやつもあればあるもんじゃないか。まったく鬼だよ、悪魔だよ」
 見れば椅子にしばりあげられたチャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]の足は、いたいたしく火ぶくれがして血がにじんでいる。チャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]はこの拷問にたえかねて、ぐったりと気をうしなっているのだったが、ひと眼、その顔をみたとたん、春木少年は思わずあっと床からとびあがった。
「あっ、こ、こ、これは戸倉老人!」
 ああ、チャンウー[#「チャンウー」は底本では「チャンフー」]とは戸倉老人の変装《へんそう》だったのである。

   怪船《かいせん》黒竜丸《こくりゅうまる》

 話変って、こちらは四馬頭目を救いだしたヘリコプターである。
 海岸通りの万国堂のうえをはなれると、進路をしだいに西にとり、須磨《すま》から明石《あかし》のほうへや
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