しろで聞えたじゃないか。それまで皎々《こうこう》と電気がついていたんだ。いったい、どこからいつの間に首領《かしら》の椅子のうしろまで、忍びこんできたんだ。それ、即ち忍術をつかう証拠だ」
「いやですぜ、先生、変なことはいいっこなしに願いましょう」
「いや、変なことではない。いずれにしてもあんな妙なやつが、ひょこひょこ出入りをするようじゃ、この六天山塞《ろくてんさんさい》もさきが知れているな」
 仔細《しさい》らしく首をひねる机博士の顔色に、さすがの荒くれ男たちも顔見合せた。相手の性《しょう》がわかっておれば、たとえ鬼《おに》でも蛇《じゃ》でも、おそれをなすような連中ではないが、闇のなかから声ばかり、姿も形もわからないとあっては、浮足立《うきあしだ》つのも無理ではなかった。
 ひょっとするとそこらの闇にひそんでいて、猫のように眼をひからせているのではないかと思うと、襟元《えりもと》から、冷たい水をブッかけられるような気持ちだった。
 口では元気なことをいってるものの、さすがに、あのような、いのちの宙吊りをやらされた机博士、その日は一日ゲッソリ参って、自分の部屋で休んでいたが、さて、その晩のことである。仙場や波立二たちと話をしていると、そこへ木戸《きど》という男がいそぎ足でとびだしてきた。
「おい、おまえたちは何をぐずぐずしているのだ。首領がお待ちかねだ。早く机博士をつれてこんか」
 木戸は一同を叱りつけておいて、机博士にちかづいた。
「先生、あんた首領になにをしたんです。首領はカンカンにおこってますぜ」
 首領――と、きくと、机博士の顔色はさっと鉛色《なまりいろ》になった。
「いやあ……別に……ちょ、ちょっと悪戯《いたずら》をしてみただけさ」
「なんだか知りませんが、首領をおこらせることが、どんなことだか、おまえさんもよく御存じのはずだ。いずれ、ただではすみませんぜ。さあ、おいでなさい。おい、みんな、机博士をにがすな」木戸の言葉に一同は、バラバラと机博士をとりかこんだ。こうなったら、袋のなかの鼠《ねずみ》も同然、机博士は急にガタガタふるえだした。首領のおそろしさは、知りすぎるほど知っている机博士なのだ。
「さあ、先生、それじゃお気の毒でも、いっしょにきてもらいましょうか」屠所《としょ》にひかれる羊《ひつじ》とは、このときの机博士のようなのをいうのであろう。よろよろと、足
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