らでもあります。いや戦争をしかけて来た国の宰相をミルキ国に案内して、そして黄金造りの部屋を一つ与える約束でもすれば、もう戦争は起らないでしょう」
「そう簡単にいくだろうか。わしはそれほど楽天主義ではない」
そういっているところへ、遠方から、微妙な音響が聞えて、それはいつも聞き慣れたメロディーであった。ああ音楽浴が始まりだしたのだ。
「ああ音楽浴? 十八時の音楽浴じゃないか」
と閣下は目をパチクリとしたが、「待てよ。いまは八時じゃないか。音楽浴が間違って始まりだした。おい係りの者は何をやっているのだ」
するとアサリ女史は、いっこう慌てた様子もなく、ミルキ閣下に向って子供にさとすようにいった。
「ええ音楽浴ですわ。今日から音楽浴令を変えたんですのよ。これからは音楽浴を一時間置きに、つまり一日に二十四回やることにしました。そうすると国民は、今までの二十四倍ちかい仕事をするでしょう。そうなれば、もう眠ることも食べることも不要なんです。音楽浴さえかければ、それの刺戟で国民はあと一時間半を疲れもなく馬車馬のように働くでしょう。その後でまた次の音楽浴をかければいいのです」
「それは乱暴だ。死ん
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