や、この政治に対する反逆なんだわ。――十八時のあの魂を膠づけにするような音楽浴、禁煙、禁酒、わたしたちにいかなる自由が残されてあるんだろう。わたしたちは医学の進歩によって永遠の生命と若さとを保証されている。死ぬのは刑罰による死か特に巧妙なる場合の自殺だけだ。わたしたちは子供を生まなくてもいい、政府からの特に命令がある場合の外は……。一人が死刑になれば、政府によって選ばれたる一人の女性が手術による人工受胎法によって一人の嬰児を懐妊し、そして分娩するために国立生殖病院に入れられ、そして一人の人間を補充すればいいんだ。性欲の目的が生殖作用だったのは大昔のことで、現代においてわたしたちは性欲のための性欲のほかに何も知らない。わがミルキ国は、人間のありとあらゆる自由を奪って、ただ一つ新しく性欲の独立と自由とだけをわたしたちに与えた。でもわたしたちは、今までその自由を充分に楽しむことを知らなかったのだ。ポールは頭脳がいい。彼こそミルキ国第一の英雄だ。彼は性欲をさらにスポーツ化し、人間を新しき自由の世界に解放するために、性の束縛から逃れることを考えついたんだ。もうわたしは、必ずしも永遠の女性でなくて
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