ありませんか。そして謹んで一言申し上げる光栄を有しますが、今日そのように改正法令が出たところなんです。だからテレビだけ送っても違反ではない……」
「それは許せない欺瞞だ。ことさら私たちの関係を誤解させるための悪辣な計略だ。何故《なにゆえ》の中傷です。何故《なにゆえ》の欺瞞です。それを説明して下さい」
博士コハクは直立した身体から火のような言葉を吐いた。
髭の閣下はみるみる蒼ざめた。が、彼はこのときブルブル慄える声で号令した。
「問答は無益だ。女大臣アサリよ、はじめ命じておいたとおり二人を処刑するんだ。それッ」
ミルキ閣下は言い捨てるなり、アサリ女史をしたがえ外へ飛びだすなり扉《ドア》をしめた。
このときまで壁を背にして傍観していた美しきミルキ夫人は、この様子に愕いて自分もともに室外へ飛びだそうとした。しかし扉《ドア》は鉄の壁でもあるかのようにビクとも動かなかった。
「おお、開けて下さい。わたしをどうしようというのです。閣下それではお話が違うではありませんか」
ミルキ夫人は狂人のようになって扉《ドア》をドンドンと叩いた。そして開閉用の釦スイッチを押しつづけたが、閉まった扉は再び
前へ
次へ
全62ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング