「本当かな」
 課長は半信半疑であったが、外にいい手がかりがちょっと見あたらないものだから、彼は部下に命じて外をあらためさせた。
 気の強い課員が先頭に立って、扉をあけて外へでてみた。そこには非常用の梯子《はしご》がついていて、この三階から中庭にまで通じていた。下を見まわしたが何にも見えない。
 それでは上かなと思って、念のために上を向いてみたが、暮れゆく空には、高いところに断雲がゆっくり動いているだけで、やはり何も見当らなかった。
「どうだ。見つかったか」
 課長も、課員と共に外へでてきた。
「だめです。幽霊のゆの字も見えません」
「壁を通りぬければたしかにこっちへでてこなければならんのですがね」
 さっきの課員が、そういって首をかしげた。
「幽霊も大金庫も壁の中に入ったまま、まだ外へででこないんじゃないかな」
「おい気味のわるいことをいうな。そんなら僕の立っている壁ぎわから幽霊のお嬢さんが顔をだすという段取になるぜ」
 急いで壁のそばからとびのく者があった。
 外をしらべ切ったが、手がかりは全くないと分ると、課長の心には、大金庫を重要書類と共に失ったことが大痛手としてひびきつづける
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