しかしかなり忍耐もしていただきたくそれに僕のいう条件をまもっていただかねばなりません。そして幽霊は、さしあたりこの警視庁の中へだすことにしましょう。それも貴官の課の部屋へでてもらいましょう」
「君は冗談をいってるんだ。もう帰ってもらおう」
「いや、僕はまちがいなく本気です」
「阿呆は、きっとそういうものだ、自分は阿呆じゃないとね」
あまり蜂矢がまじめくさって幽霊の話をし、しかも所もあろうに捜査課の中へ幽霊をだそうと確信あり気にいうので課長はあまりのばかばかしさに、さきほどの怒りも消えてしまい、蜂矢をもてあまし気味となった。蜂矢はそんなことにはかまわずしばらく考えていた末に、こういった。
「魚を釣るにはえさが要るように、幽霊をつりだすにも、やはりえさが必要なのです。僕は今日の午後そのえさを持ってきて貴官の机の上に置きます。但しこのえさは絶対に貴官たちの手によって没収しないようにねがいます。たとえそれがどんなに貴官たちをほしがらせても。約束して下さいますか」
「約束はいくらでもするがね、だが……」
「幽霊のでる時刻は夕方になってあたりが薄暗くなりかけてから始まり翌日の夜明けまでの間です。
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