のもまた現実だった。
 だが、今のが現実だとしたら、いったいあれを何とといたらいいだろうか。この世ながらの幽霊の首を見たといったらいいであろうか。それとも妖怪変化が研究室の中に現われたといった方がいいか。とにかくどっちにしたところで、自分の話を本当にとってくれる人は先ずいないだろう――と、道夫はもう今から当惑した。
 三十分待ったが、ついに何の怪しいことも起らないので、道夫は木見家の庭をぬけだし、くるっと廻《まわ》り道をして、やがて自分の家へもどった。そして戸にかけ金をかけて寝床へ入った。
 もちろん目が冴《さ》えて、睡《ねむ》れなかった。解き難い謎が、巴《ともえ》まんじになって道夫の頭の中を回転する。
(あの怪しい女の首と、雪子姉さんの行方不明との間には、いったいどんな関係があるのだろう?)
 何か関係があるような気がしてならぬ。しかしそれはどんな関係か、道夫には見当もつかない。
(あの怪しい女の首は、はたして雪子姉さんの顔だったろうか)
 そうであるようにも思うが、はっきりそうだとはいい切れない。雪子姉さんの研究室で見たのだから雪子姉さんに見えたのかもしれないし、また雪子姉さんのこ
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