ひょっとするともっと驚いている人がありはしないかと思う。中でも女探偵の速水女史と、妾の妹の静枝とがはからずもそれを発見したときの驚きといったらなかった。
「まア驚いてしまいますわねえ。奥さまはどうして姙娠なすったんですの。相手は何処の誰でございますの?」
女史は横目で妾のお臍《へそ》のあたりを睨みながら、あたり憚らず驚きの声を放った。
「まアお姉さま、驚かせるわネ。でもあたくしは存知《ぞんじ》ていますわ。あたくし達が伊豆へ行っている間にお作り遊ばしたんでしょう」
静枝も驚きの目を瞠《みは》ったが、これは嬉しそうな驚きに見えた。しかし速水女史の方はそれ以来ニコリとも笑わなくなってしまった。こうなっては、妾の立場というものがいよいよなくなってしまったのだった。
それだけではなかった。それからというものは女史と静枝とは、暇さえあれば額を合わせて何事かブツブツと口論しあった。それを耳にするにつけ、妾はたまらなく不愉快になっていった。
ところで妾の待ちに待ったる貞雄が、約束した五ヶ月目にはとうとう姿を見せず、遂に七ヶ月目となってまだ肌寒く雪さえ戸外にチラチラしている三月になってやっと妾の
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