たことだろう。堪えかねた妾は幾度も、南八丈島の彼の許へ手紙を出したけれど、それは梨《なし》の礫《つぶて》同様で、返答は一つもなかった。
 その五ヶ月の間を、妾はどんなに驚き、焦《あ》せり悶《もだ》えたかしれない。前には三人の双生児のことで思い悩んだ妾だったけれど、この度はそれどころではなかった。三人の双生児などは、もうどうでもよかった。ましてや真一の死などは何のことでもなかった。彼を殺した犯人が女探偵の速水女史であっても、また静枝が妾の本当の妹でなくても、それはどうでもよいことだった。事実妾は平気で、かの二人の女を同居させていた。二人は全く家族のように振舞っていたのである。ときには、誰がこの家の主人だか分らぬようなことさえあった。その五ヶ月を、妾は一体何事について驚き焦り悶えていたのだろうか。
 姙娠!
 妾は目下《もっか》姙娠五ヶ月なのであった。
 そういうと、きっと誰方《どなた》でもこの余り意外な出来ごとのために、目を丸くなさることだろうと思うが、妾の懐姙《かいにん》は最早疑う余地のない厳然《げんぜん》たる事実なのである。
 さらに驚くことは、この懐姙した胎児について、誰がその父親
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