たのでございます。それで夜中に起きてどこかへ行ってしまうようなことがあってはと、いつも座敷牢の中に入れられていたのでございますわ」
「でもいつでも貴女は寝てばかりいて、起きてたところを見たことがないわ。昼間から寝てばかりいたのは何故ですの」
「あれはこうなのでございます。あたくしは或る夜、夢遊して外に出たんですの。そして不幸にも崖から川の中へ落ちて足を挫《くじ》き、腕を折り、ひどい怪我をしたことがあるので、それで立ち上れなくて、いつも寝ていました」
「ああそうだったの。気の毒だったわネ。でも、脚を挫いているのなら夢遊でも外は歩けないのじゃない」
「いえそれはこうなんですの。夢遊病者は、たとえ足が悪くても、そのときは歩けるのですから不思議ですわ」
静枝の答は一々明快だった。まだ聞きたいことが沢山あったがあまり尋ねては折角《せっかく》巡逢《めぐりあ》った同胞《はらから》のことを変に疑うようで悪いと思ったので、もう一つだけ重大なことを尋ねた。
「あの、『三人の双生児』とお父さまがお書き遺しになった言葉ね、あれはどういう意味でしょうね。あなたと妾とだけでは二人の双生児で、三人ではありませんも
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