航空路でもいけるんでしょう」
「空中旅行は、外敵《がいてき》の攻撃を受ける危険がありますからね。この地下鉄の方が安全なんです。なにしろ巨大なる原子力が使えるようになったから、昔の人にはとても考えられないほどの大土木工事や大建築が、どんどん楽にやれるのです。ですから、世界中どこへでも、高速《こうそく》地下鉄で行けるのです」
「ふーン。すると今は地下生活時代ですね」
「まあ、そうでしょうな。しかし空へも発展していますよ。そうそう、明日は、羽田空港から月世界探検隊が十台のロケット艇《てい》に乗って出発することになっています」
正吉は大きなため息をついてひとりごとをいった。
「三十年たって、こんなに世界や生活がかわるとは思わなかったなあ。こんなにかわると知ったら、三十年前にもっと元気を出して、勉強したものをねえ」
あとで分った話によると、例のモーリ博士は月世界探検に行ったまま、遭難《そうなん》して帰れなくなっているということだ。こんどの探検隊が、きっと博士を救い出すであろう。
底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
1992(平成4)年2月29日第1版第1刷発行
初出:「少年読売」
1947(昭和22)年10〜12月
入力:海美
校正:土屋隆
2007年8月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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