は正吉を連《つ》れて食堂を出た。
「ここは見なれないところですが、銀座の近くでしょうか」
「さよう。銀座までは三キロばかりはなれています。しかしすぐですよ、動く道路にのっていけば……」
「なんですって。何にのるのですか」
「動く道路です。そうそう、あなたの住んでいた三十年前には、動く道路はなかったんでしょうね。そのころは電車や自動車ばかりだったんでしょう。今はそんなものは、ほとんどなくなりました。その代りは動く道路がしています。道が動くのです。五本の動く道路が並んでいるのです。昔あったでしょう。ベルトというものがね。あれみたいに動くのです。歩道に平行に五本並んでいて、歩道に一番近いのが時速《じそく》十キロで動いているもの。次が二十キロ、それから三十キロ、四十キロ、五十キロという風にだんだん早くなります。そしてその動く道路は、どこへ行くか方向がかいてあるのです。……ほらごらんなさい。これが銀座行きの動く道路ですから」
ようやく外に出た。日光がかがやいていた。それまでは地下にいたことが分った。なつかしい日光、うまい空気! しかし変だ。
「ここはどこですか。みたことがない野原ですね」
「こ
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