こが銀座です。あなたの立っているところが、昔の銀座四丁目の辻《つじ》のあったところです」
「うそでしょう。……おやおや、妙《みょう》な塔《とう》がある。それから土《ど》まんじゅうみたいなものが、あちこちにありますね。あれは何ですか」
 林と草原の間に、妙にねじれた塔や、低い緑色の鍋《なべ》をふせたようなものが見える。
「あのまるいものは、住宅の屋上になっています。塔は、原子弾《げんしだん》が近づくのを監視《かんし》している警戒塔《けいかいとう》です。すべて原子弾を警戒して、こんな銀座風景《ぎんざふうけい》になったのです。みんな地下に住んでいます。ときどきものずきな者が、こうして地上に出て散歩するくらいです。おどろきましたか」
 正吉はたしかにおどろいた。あのにぎやかな銀座風景は、今は全く地上から姿をけしてしまったのだ。


   近づく星人《せいじん》


「まだ、戦争をする国があるんですか」
 正吉少年は、ふしぎでたまらないという顔つきで、案内人のカニザワ区長にきいた。
「やあ、そのことですがね、まず戦争はもうしないことに決めたようです」
「戦争をするもしないも日本は戦争放棄《せんそ
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