だ。この少年は三十年間、氷のようになっていて、年をとることをしなかったのだ。
「待っていましたよ、小杉君。われわれは君を歓迎《かんげい》します」
 と、カンノ博士がいった。
「わたしたちがお世話しますから、安心していらっしゃいね」
 スミレ女史がいった。


   かわりはてた銀座《ぎんざ》


「二十年たったら、世の中がどんなに変っているか、それを見たかったから、こんな冒険《ぼうけん》をしたんです」
 と、小杉少年は、まわりの人たちに話した。
「ああ、お話中しつれいですが、じつは二十年じゃなく、あなたが冷凍されてから三十年たっているのですよ。ことしは昭和五十二年なんですからね」
「おやおや、三十年もぼくは睡《ねむ》っていたのですか」
 少年の伯父《おじ》のモーリ博士が、この冷凍金属球《れいとうきんぞくきゅう》の設計者《せっけいしゃ》だったそうな。日本アルプスの万年雪を掘ってその中へおとしこんだのも、モーリ博士の考えだった。その博士は二十年後になってこの冷凍球を雪の中から掘りだしてくれる約束になっていたのに、博士はその約束をはたさなかった。いったいどうしたわけであろう。博士は何をしてい
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