すべきである――というのです」
カニザワ東京区長は、そう語りながら、ハンカチーフを出して、顔の汗《あせ》をぬぐった。おそらく氏は、その戦争|勃発《ぼっぱつ》一歩前の息づまるような恐怖《きょうふ》を、今またおもいだしたからであろう。
「で、戦争は起ったのですか、それとも……」
「もう一つの重大なことがらは」
と区長は正吉の質問にはこたえず、さっきの続きを話した。
「連合科学協会員は最近|天空《てんくう》においておどろくべき観測《かんそく》をした。それはどういうことであるかというと、わが地球をねらってこちらへ進んでくるふしぎな星があるということだ。それは彗星《すいせい》ではない。その星の動きぐあいから考えると、その星は自由|航路《こうろ》をとっている。つまり、その星は飛行機やロケットなどと同じように、大宇宙を計画的に航空しているのだ」
「へえーッ。するとその星には、やっぱり人間が住んでいて、その人間が星を運転しているんですね」
「ま、そうでしょうね――だからわれわれは、もう一刻《いっこく》もゆだんがならないというのです。その星はわが太陽系のものではなく、あきらかにもっと遠いところからこ
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