もう登山どころでない。このふしぎな金属球の中をのぞいてみないと、承知ができなかった。
「とにかくこの球は、万年雪がとけて、その下から出て来たものだよ。もっと上にあったのが、ころがりだして、ここまで来て停《とま》ったんだと思う」
「火星からなげてよこしたものじゃないか。開けると、中から火星人の手紙かなんか入っているんじゃない?」
「火星からじゃないよ。だってこのとおり×取扱注意、扉Aを開け×と、日本文字で書いてあるんだから、これは日本でこしらえたものにちがいない」
「早く、その扉Aというのをあけてみた方がよかないでしょうか」
「そうだ。それがいい。そうしよう」
 扉Aというのはどこかと、球の表面をさがしまわった結果、後の方に半ば土にうずもれて×扉A×と書いてあるものが見つかった。土を掘ってみると、扉Aはまるいふたのようなものであった。それにはハンドルがついていて、左へ二十回ねじるように示してあったので、そのとおりにした。
 するとそのふたみたいなものが開いた。金属板の上には、やはり薄彫《うすぼ》りになった文字がつらなっていた。それを読むと、おどろくべきことが書いてあった。
     
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