こ」に傍点]がはっている。いそぎんちゃく[#「いそぎんちゃく」に傍点]も、手をひろげている。
「水族館だと思いますか」
区長さんが笑いかけた。
「よく見て下さい。今、燈火《あかり》をつけて、遠くまで見えるようにしましょう」
そういって区長は、窓の下にあるスイッチのようなものを動かした。すると昼間のようにあかるい光線が、さっと水の中を照らした。その光は遠くにまでとどいた。魚群がおどろいたか、たちまちこの光のまわりは幾組も幾組も、その数は何万何十万ともしれないおびただしさで、集って来た。
「これでも水族館に見えますか」
と、区長がたずね、
「いや、ちがいました。これは本物の海の中をのぞいているのですね」
遠くまで見えた。こんな大きな水族館の水槽はないであろう。
「お分りでしたね。つまりこのように、わが国は今さかんに海底都市を建設しているのです」
「海底都市ですって」
「そうです。海底へ都市をのばして行くのです。また海底を掘って、その下にある重要資源を掘りだしています。大昔も、炭鉱で海底にいて出るのもありましたね。
ああいうものがもっと大仕掛になったのです。人も住んでいます。街もあり
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