正吉を指《ゆびさ》した。
「えっ。この少年が、僕の兄さんですか。ちょっとへんな工合だなあ」
「まあ、ほんとうだわ。写真そっくりですわ。でもあたしの兄さんがこんなにかわいい坊やでは、兄さんとおよびするのもへんですわね」
「正吉や。こっちはお前の弟の仁吉《にきち》です。またそのとなりはお前の妹のマリ子ですよ」
「やあ、兄さん」
「兄さん、お目にかかれてうれしいですわ」
「ああ、弟に妹か――」
 といったが、正吉も全くへんな工合であった。弟妹《きょうだい》に会ったようではなく、おじさんおばさんに会ったような気がした。


   びっくり農場


 思いがけない母親とのめぐりあいに、正吉少年はたいへん元気づいた。見しらぬ世界のまっただ中へとびこんだひとりぼっちの心細さ――というようなものが、とたんに消えてしまった。
「ここからどこへつれていって下《くだ》さるのですか」
 と、正吉はカニザワ区長やサクラ院長などをふりかえって、たずねた。
「君がびっくりするところへ案内します。ちょっぴり、教えましょうか。日本の新しい領土なんです。ハハハ、おどろいたでしょう」
「日本の新しい領土ですって。それはへん
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