なものが見える。
「あのまるいものは、住宅の屋上になっています。塔は、原子弾が近づくのを監視している警戒塔です。すべて原子弾を警戒して、こんな銀座風景になったのです。みんな地下に住んでいます。ときどきものずきな者が、こうして地上に出て散歩するくらいです。おどろきましたか」
正吉はたしかにおどろいた。あのにぎやかな銀座風景は、今は全く地上から姿をけしてしまったのだ。
近づく星人《せいじん》
「まだ、戦争をする国があるんですか」
正吉少年は、ふしぎでたまらないという顔つきで、案内人のカニザワ区長にきいた。
「やあ、そのことですがね、まず戦争はもうしないことにきめたようです」
「戦争をするもしないも日本は戦争放棄《せんそうほうき》をしているんだから、日本から戦争をしかけるはずはないんでしょう。もっともこれは今から三十何年もむかしの話でしたがね」
正吉はあのころ新憲法ができて、それには戦争放棄がきめられたことをよくおぼえていた。
「正吉君のいうことはただしいです。しかしですね。その後また大きな戦争がおこりかけましてね――もちろん日本は関係がないのですがね――そのために、おび
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