それらのものがていねいにはいっていた。もちろんそれを開く方法も記されてあった。
 キンちゃんの第六感は、するどく命中したのであった。
「キンちゃんは、すごいんだね。見直したよ」
 と正吉はキンちゃんの手を握って振った。
 マルモ探検隊は、これらの物資を十分に有効に使い、それから三ヶ月間火星に踏みとどまって火星の探検を十二分に果たし、その翌年早々無事に地球へ帰還した。
 もちろん一行は大歓迎を受けたが、隊長以下は休むひまもなく探検報告のため、各地を訪問した。
 正吉もキンちゃんも、いつも一行に加わっていた。正吉はマルモ隊長の秘書をつとめ、キンちゃんはあいかわらず、一行のためにおいしくて栄養たっぶりな食事を用意するのを仕事にしていた。
 マルモ隊長は、報告の最後のところを、かならず次のようなことばで結ぶのであった。
「われわれ地球人類は、このさい急いで大宇宙探検計画をたて、一日も早くそして一人でも多くその探検に出発するのでなければ、やがて他の遊星生物のためにお先まわりをされてしまって、地球人類の発展はきゅうくつになるおそれがあると信じます。
 世界の人々は今すぐにも手をとりあって、この重大なる仕事にかかりたいものです」
 さすがにマルモ隊長は、未来をよく見ている。地球人類の繁栄は、たしかにマルモ隊長の指し示す方向にある。それを早くさとって実行にうつすのが、世界人だ。少年少女たちは、やがてかならずこの重大な仕事につくのだから、今からいっそう勉強しておかなくてはならない。



底本:「海野十三全集 第13巻 少年探偵長」三一書房
   1992(平成4)年2月29日初版発行
初出:「少年読売」
   1948(昭和23)年3〜12月
入力:tatsuki
校正:松永正敏
2001年7月17日公開
2007年8月29日修正
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