しい奴です」
「らんぼうするな、しかたがない。隊員はこっちへ固《かた》まれ。そしてらんぼうする相手に反抗しろ」
 マルモ隊長は、ついに争闘《そうとう》を命令した。
 このらんぼうなる異人の一団は、何者であろうか。


   大暗闘《だいあんとう》


 なにしろその異人《いじん》たちはなかなか力があって、マルモ探検隊員は圧迫されがちであった。その上に人数も相手の方が倍ぐらい多いのである。形勢はよくない。
 隊員たちは武器を持っていないわけでなかった。だがマルモ隊長は、それを使うことを命じなかった。隊長としては、出来るだけ平和的手段でもって事をかたづけたかったからである。だが、困ったことに、相手とはことばが通じない。電波を出して、
「もしもし、君たち、らんぼうは、よしたまえ。話があるなら聞きますよ」
 と呼びかけても、相手はさっぱり感じないのであった。
 その上、相手は力がある。マルモ隊長は、隊員を一つところにあつめて円陣《えんじん》をつくり、まわりからおどりかかって来る相手めがけて、そのへんにころがっている大きな岩石をなげつけさせた。そうして相手を近づけないようにするためだった。
 月世界の上では、同じ大きさに見える岩石《がんせき》でも、地球の上で感ずる重さの六分の一にしか感じない。だから大きな岩石を隊員はかるがると持ちあげて遠くまでなげとばすことが出来た。
 ところが異人たちは、それには閉口《へいこう》せず、遠まきにして目を光らかせ、すきをみては、とびこんで来た。岩石をなげつけられても、けがをして血を出すようでもなかった。
「ははあ、こっちが疲れるのを待っているのだな」
 マルモ隊長は、そう気がついて、どきんとした。なにしろ相手は、ますます活発《かっぱつ》にあばれてみせるのだった。
 そのうちに、相手の一部が、場所をかえて、装甲車の方へ近づいていった。
「あ、装甲車をうばわれては、たいへん」
 マルモ隊長はおどろいて、隊員の半分をさいて装甲車の方へ急行させた。
 その人たちは、装甲車の中にはいって、それを運転して走りだした。すると異人たちは、それを追いかけた。平地なら装甲車はどんどん走れるが、ここはトロイ谷《だに》である。道はでこぼこしている上、どっちへ走ってもすぐ崖《がけ》につきあたりそうになる。そうなるとスピードが出せない、いつの間にか装甲車の上に異人たちが三
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