を見つけた。しかしこの窓からは、あかりがはいってこなかった。鉄格子の外に、窓をふたしているものがあるのだ。
「あれを、叩《たた》きやぶろうじゃないか、するとあかりがはいって来るかもしれないよ」
「よろしい。それでは、元の場所まで行って、階段のこわれたところから、材木でも見つけてこよう」
そのときだった。
とつぜん大きな音をたてて、鉦《かね》が鳴った。かーン。
「あ、なんだろう」
ぎりぎりと音がして、また、かーンとひびいた鉦の音。
四少年は思わず一つところにかけ集った。
久しぶりの報時《ほうじ》
「なあんだ、あれは、時計が鳴りだしたんだ」
「えッ、時計か、ほんとか」
「時計だよ、時計はさっきから動いていた、だからちょうどいいところへ来れば、音をたてて鳴りひびくはずだ」
「三つうったね、三時だ」
「そうだ、三時だ、ほんとうの時間は、今何時ごろだろうか」
「やっぱり三時ごろじゃないかな」
「気味のわるい音だね、この時計台の時計のひびきは……」
そういっているとき、つづいて思いがけないことが起った。
それは、さっき見つけた空気穴らしい小窓《こまど》のふたが、ひとりでに、ぱっとあいた。そしてそこから、さっとあかるい光線がさして来た。
「あ、あの窓があいたよ」
「だれが、あけたんだろうか」
「みんな警戒するんだ、きっと、このあと、なにか起るぞ」
五井が叫んだ。
「ほら、もうなにか起っているよ、そこの壁が動いている」
四本の声だ。
「え、壁が動いているって」
「そうだ、窓の左手の壁だ、壁全体が上へあがって行く」
「あ、そうだ。みんな、うしろへ下れ、危険だぞ」
五井は、みんなを壁と反対のうしろへ下げた。その間にも壁は音もなく上にあがってゆく、そのむこうに何があるのか、あいにく、その奥はまっくらで、何の形もみとめることができなかった。
壁はだんだんあがっていった。天井の中にはいってしまうのであろうか。
やがて、壁はあがり切った。
ことんと音がしたと思ったら、今あがった、壁のむこうの部屋が、急にあかるくなったのだ。どこかに、あかり窓があって、それがあいたものらしかった。
さて四人の少年は、次の部屋に何を見たろうか。
「あッ」
「なんだ、あれは……」
少年たちは、めいめいの心の中に、かねて聞いていた左東左平の妻お峰と娘千草らしい二体の白骨が、寝床によ
前へ
次へ
全40ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング