の爆撃あたりには、木製の爆弾を使っているのかもしれないよ」
「でも、木製爆弾なら、あんな逞《たくま》しい音はしないでしょう」
「そうだね。今日の爆弾は音が、悪い……」
といっているとき、大きな音響と共に、目の前が火の海になったかと思ったら、私はそのまま気を失ってしまった。……
今日の日記はこれでおしまいである。なぜなれば、私が気がついたのは、その翌朝《よくあさ》のことであったから、今日の日記としては、気を失ってしまった点々々というところで終りなのである。
3
金博士へ送る第三回目の日記。
前の日記から、また十年たったのである。
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二十×年八月八日 晴れ
[#ここで字下げ終わり]
ラジオは、今朝は空が晴れているとアナウンスした。十年前のころは、夜が明けて、空が晴れていると、空襲があるという予想から、晴天《せいてん》を恨《うら》んだものである。この頃は、晴れていようが、曇っていようが、どっちでも大した差違《さい》はない。どんな日でも、飛行機はとんで来て、正確に爆撃をしていくのだから。
しかしこの頃のように、われわれ市民は、地下へ潜《もぐ》
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