に向け、最後の突撃を試みました。
やがて、一段と大きく岩の崩《くず》れる音とともに、われわれは思いもかけない明るい部屋の中に突入したのです。私は愕《おどろ》きの目をみはりました。そこは大きな洞窟《どうくつ》で、猿とも人ともつかぬふしぎな動物が居合わせました。しかしその動物は別にわれわれに危害を加える様子はありませんでした。
私の予《か》ねて勉強しておいた前世古代語《ぜんせいこだいご》が役にたって嬉しいことでした。彼等は自《みずか》ら、これがピポスコラ族であることを申立てました。彼等は二十万年前に、地中へ潜《もぐ》ったと申して居りました。その当時は、地上や空には恐竜《きょうりゅう》などの恐ろしく大きな動物が猛威《もうい》をふるい、地底深くには大土竜《おおもぐら》(それが退化して今日残っているのが例のもぐらもちです)に攻めたてられ、遂に上下谷《じょうげきわ》まって横に向いて逃げるうち、このところに安全洞《あんぜんどう》を見出して、穴居《けっきょ》動物となり果《は》てたことが分りました。
すべて、金先生の仰有《おっしゃ》ったとおりです。そこで私は洪君とはかり、これから何とかしてこの土地でピポスコラ族にならい穴居生活をつづけることになりました。もしもどこかで、洪君のためによき配偶《はいぐう》が見つかるならば、われわれ人類は、やがてネオピポスコラ族という新しい種族《しゅぞく》をつくり、この地中に、繁栄することでありましょう。
底本:「海野十三全集 第10巻」三一書房
1991(平成3)年5月31日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
1941(昭和16)年8月
※底本は表題に、「こんじゃくばなしサンドイッチへいだん」と読みを付しています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:まや
2005年5月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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