こととて、一方の血路を切り開いて兎《と》も角《かく》も乗り切ることが第一義であった。一応その定義に服従して、結果を出すのがいいであろう。
学説に拠《よ》れば探偵小説とは謎が提供され、次に推理によってその謎を解く小説のことである。つまりここに一つの謎があって、その謎を構成している諸材料に関する常識乃至《ないし》は説明だけの知識でもって、その知識の或る部分を推理によって適当に組合わせてゆくとそこで謎が解けるそのような推理体系を小説の形で現わしたものが探偵小説だというのである。
鼠の顔を推理で解いて、果してどういう答がでるだろうか。
「鼠の顔とかけて、何と解きなはるか」
「さあ何と解きまひょう。分りまへんよってにあげまひょう」
「そんなら、それを貰いまして、臥竜梅《がりゅうばい》と解きます」
「なんでやねン」
「その心は、幹《みき》(ミッキー)よりも花《はな》(鼻《はな》)が低い、とナ」
これは単なる謎々であって、探偵小説ではない。第一その謎を解く鍵《キイ》が、至極フェアとまではゆかない。無理な着想を強《し》いる。
もしこれが探偵小説の形で発表されていたにしても、その点で優等品とはゆ
前へ
次へ
全41ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング