をくりかえし行うのであった。
鮫どもが腹をすかせたときは、すぐそれと分った。そうなると鮫どもは一刻も早く、あのガガーン、ガガーンという進撃の銅鑼《どら》の音を聞きたいものをと、その銅鑼《どら》のぶら下げてある弁天島のまわりを押すな押すなと蝟集して、ひどいときには島の上まで虎鮫がのぼってくることさえあった。
「おい、どうじゃな」
と、楊《ヤン》博士は、若き歯科医務長にたずねた。
「ああ楊《ヤン》閣下、いやもうたいへんな発達ぶりです。今朝の診察によりますと、全体的に見まして、鮫の歯の硬さは、二倍半も強くなりました。なかには四倍五倍という恐ろしい硬度をもっているものもあります。もう実戦に使いましても大丈夫でしょう」
「うむ、そうか」
楊《ヤン》博士はわが意を得たりというふうに、頷いた。博士は、さらに肥った大男をよんだ。
「おお黄生理学博士。どうです、このごろの虎鮫の反射度は?」
「ああ閣下、それならもう百パーセントだとお答えいたします。ガガーン、ガガーンと銅鑼《どら》を聞かせますと、彼らの恐ろしき牙は、ただちにきりきりとおっ立ち、歯齦《はぐき》のあたりから鋼鉄を熔かす性質のある唾液が泉
前へ
次へ
全17ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング