ャンスだった。今夜こそ、どうしても脱走を決行しなければならない。だがもし、その脱走が失敗に帰したとしたら、それこそ森おじさん――イヤ、これからはもうおじさんなんて呼ばないことにしよう――森虎造の掌中に握られているようなこの島の中のことだから、僕の生命は無いものと覚悟していなければならないだろう。
決死の脱走計画
僕が覘《ねら》ったのは、この監禁室の入口の扉だった。
その扉は大きな鉄扉でできていた。壁は鉄筋の入った厚いコンクリートの壁だった。どっちもそのままでは破ることができない。
その鉄扉と壁体とは、外から大きな鉄の腕金《うでがね》が横に仆れて、堅固なつっぱりになる仕掛だった。その上、下ろされた腕金には逞《たくま》しい錠前が懸るようになっていた。
いつも内部で気をつけていると、鉄の腕金の方は下ろされ、錠前の方は午後十一時の点検がすむとピチンと下ろされるが、それまではいつも外されていることが分った。すると結局扉の外の横になっている腕金だけ、縦にできさえすれば、この部屋から出られることになるのだが、室内からその腕金に手を届かせられるような都合のよいことにはなっていなか
前へ
次へ
全46ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング