千万である。注意を払って、見つけ次第逮捕するように。場合によっては、射殺するも已《や》むを得ない。逮捕又は射殺者には銀二千ドルの賞金を与える。……」
 僕は、自分で自分の逮捕布告を聞いた。銀二千ドルの生命か! その価値は高いとは云えなかったけれど、そんな賞金を出してまで逮捕――いや射殺までしようというのは何ごとか。僕はそんな恐ろしい人間なのだろうか。見ていると、これはどうやら、森虎造が賞金を出すのじゃないかと思われた。森虎は、亡き父の親友だと聞いていた。父が米国で死んだとき、それを当時東京に住んでいた僕たちに詳しく知らせてくれたのは、森のおじさんだった。またこの地へ、母のお鳥と僕とを心よく迎えてくれ、室まで僕たちに貸し与えてくれて好意を見せた森のおじさんだった。それが間もなく僕を苛酷《かこく》に扱い、精神病院に入れたり、揚句《あげく》の果は、僕を射殺しろとまで薦《すす》めている。……なんという恐ろしい変り方だ。……僕にはサッパリ理解ができないことだった。
 賞金として銀二千ドル!
 群衆は踊りのことも歌のことも、一時忘れてドッと歓声をあげた。
「畜生! お前らに掴まってたまるかい」
 
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