は、ゴンドラの周囲をぐるぐる廻っているらしい。ときどき、ゴンドラの縁《ふち》と気球との間に、飛行機のような形が見えるのだけれど、二人とも視力がよわっていて、はっきり見えない。
 そのうちに、サイレンらしいものが鳴るのが聞えた。
「気のせいか、××陣地のサイレンと同じ音色だが……」
「なにをいうんだ。あれはザバイカル管区の号笛《ごうてき》だ。わしはよく知っている」
 それから暫くして、二人はいきなり激しい衝撃をうけ、あっと思う間もなくゴンドラから放り出された。とたんに二人とも気を失ってしまったのは無理ではなかった。気球が下《くだ》りに下ってついにゴンドラが大地にぶつかったのだ。
 その翌日、「火の玉」少尉は病院のベッドで目を覚ました。おやと思って目をあげると、そこに田毎大尉や戸川中尉の顔があったので、びっくりした。それからの歓喜は、ここに綴《つづ》るまでもないが、彼ののっていた気球の下りたところは、不思議にも実に七日前に離陸したもとの××陣地であったのである。まるで嘘のような出来事であった。言う者も聞く者も、ともに不思議な出来事に、驚嘆《きょうたん》の連発であったが、これこそ不連続線のな
前へ 次へ
全39ページ中38ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング