はいらないぞ、分団長!」
 神崎分団長は、鉄造の言葉にすっかり感動してしまって、強い握手をもとめた。
「ああ、よく教えてくれた。やはり日露戦役に金鵄勲章《きんしくんしょう》をもらってきただけあって、鍛冶屋上等兵はえらいッ!」
「オイオイ、上等兵なんかじゃないぞ、軍曹だぜ!」
「ああ、そうかい。軍曹かい。これは失敬。もっとも、のらくろ二等兵なんかもこのごろ、少尉に任官したそうだからね。ましてや君なんか人間で……」
「こらッ!」
 大分ヨボついているが、この後備軍人たちも相当なものだった。これから世界一を誇るS国空軍の強襲をうけようという場合にもかかわらず、平然と、いつものような冗談をいいあうほど、くそおちつきに落着いていた。
 神崎分団長は、そこで肚《はら》をきめて、命令を発した。少年達を召集して、警護、警報、交通整理、避難所管理の各班に分属させること、救護班、防火班、防毒班、工作班は大人がやること……、これでやっと分団長の気は楽になった。
「オウ、分団長はいますかァ……」
 と、自転車で駈けつけてきたのは、警報班長の髪床屋《かみどこや》の清《せい》さんだった。
「分団長は、ここだここだ
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