働いてくれた在郷軍人の連中の大部分が、戦地へ召集されて出ていっている。残るは、わし等のような老ぼれと、少年達とばかりだ、それじゃ、とても手が足りなくて困っているだろうと思ったよ」
「ウン、そのとおりだ。全く弱っている。いまラジオでも聞いただろうが、突然また警戒警報が出た。ところが、この小人数になった防護団では、とても手が廻りゃしないことがわかっている」
「一体、人員はどのくらいに減ったのかい」
「とても話にならぬ。半分ぐらいに減っちまったんだよ。その上、頼みになるような若者達がいないと来ている。……これだけで、警護に、警報に、防火に、交通整理に、防毒に……といったところが、とても、やりきれやしない。まさか、こんなに防護団が貧弱になろうとは思わなかったよ」
 神崎分団長は、心配の眉をひそめ、途方にくれたという顔附《かおつき》で鉄造の方を見た。
「仕方がないよ。防護団も、戦時にはこうなることが初からわかっていたのだ。愚痴《ぐち》をならべたって仕方がない。とにかく御国のために、ぜひ完全に防護してみせなきゃならない。困っているのは、この五反田防護団だけじゃない。日本全国で、みなこの通り手が足り
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