軍は大きくうなずいた。
「しかるに、S国はその痛手には一向参る様子もなく、チ市にあらかじめ待機させてあった超重爆撃機七十機を、○○○○の北方ス市に移しました。この目的はもちろん、わが国土内に深く入りこんで空襲をやるためでありますが、その飛行場出発はいつになりますやら不明と報道されています。とにかく、これが最も恐るべき相手であります」
香取将軍は、また大きくうなずいた。そして口を開いた。
「又、U国の有名な空軍も、いま○○○○半島に集っているそうじゃな。S国とU国との世界の二大空軍が握手しそうな様子に、大分心配しているむきもあるが本官は、それほど憂慮はしていない。たとえ、全世界の空軍が一つになっても、戦争となると、おのずから順序がある」
と、将軍の太い眉がピクリと動いた。
「さっき、C国の局外中立宣言(どちらにもつかぬということ)が一両日のびるという情報が入りました。やはり昨夜の空襲が原因しているものと見えます」
と、高級副官がいった。
「C国の態度はなかなか決まらんだろう。決まらんところがあの国の国がらなのだ。日本が強ければ、日本につこうとするし、日本が弱りかけたとみると、日本を
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